先日ブログで取り上げた歯科衛生士以上に人手不足などで悩んでいるのが、歯科技工士ではないでしょうか?
歯科技工士も国家資格で、歯科医師、歯科衛生士との3本柱で歯科の治療が行われています。歯科医療は、医療の一部門として、口や歯の治療や病気の予防を目的としていますが、再生能力がないため、病気によって失われた組織を人工材料(金属・プラスチック・セラミックなど)によって回復(修復)するという特殊性をもっています。歯科技工士は、人工材料を使って歯の修復物や入れ歯をつくる仕事をしています。
歯科技工士に関しては、高齢社会を向けて、必然的に入れ歯の需要がますます増えてきています。入れ歯に関しては、しっかりと口に合わないと、食生活で患者様を苦しめることとなり、身体に影響がでることもあるため、歯科技工士の技術こそが、日本を支えていると言っても過言ではないでしょう。
また、新しい流れとして、美容とのかかわりが深まっています。セラミックを中心とした美しい修復物を作るのも、歯並びをきれいにする「矯正」でもその装置をつくるのも歯科技工士です。新しい技術の発達によって、CAM/CADなどの操作を含め、色々な視点でのアンテナを張っていないと難しい仕事だといえます。また、日本の歯科技工士のレベルは世界一でともいわれ、世界からもその技術が注目されています。
現在、歯科技工士に関しては、歯科医院の院内ラボ・歯科技工所・独立開業(フリー・中小企業)に所属しています。歯科技工士に関しては、患者様に直接接する機会が少ないため、どうしても注目されることが少ないようですが、技術の発達が進んでいるからこそ、重要性が増してきています。
特に審美歯科やインプラント、そして高齢化社会を考えると入れ歯など細かい要望を増えてきているため、上記のような内容に力を入れている医院では院内ラボを売りにすることで、患者様への他院との差別化を図ろうとしています。
先日のニッポン放送で「歯医者さんと歯科技工士の過酷労働で我々の診療に危険信号!」という特集が組まれていました。
http://www.1242.com/goodday/?id=2&YMD=2008-10-02
歯科業界について
○歯科医院の数は全国で67000件以上あり、全国のコンビニよりも多い。
歯医師は現在約10万人。
○その一方で、8020運動など、予防歯科が浸透して、
今子供たちはほとんど虫歯がない状況。
お年寄りは、体の衰えとともに入れ歯が必要になってくるので、
全体的な患者数は減ってはいないものの、
歯医者さんの数だけが増えているので、患者さんを取り合うという状況にある。
○歯医者さんは少しでも利益を確保したいので、
安い歯科技工士さんに「詰め物.かぶせ物」を発注する、
ダンピングする。すると、技工士さんたちは生き残るために
安く請け負わざるをえなくなる・・・という、負の連鎖が起きているのです。
〇歯科では、収入につながる保険点数の73項目が20年間も据え置かれたまま。
  この20年間で、物価は1.2倍から2倍になっている。
○歯科医院の廃止、休止件数は1642施設、歯科技工士の離職率は
75パーセントに上るなど現状の深刻さを物語っています。
〇クラウンと呼ばれる、かぶせるものをつくるのに、6時間。
ひとつできて2000円。並行して2,3個つくるのだが、材料費や人件費、
場所代などを差し引くと時給200円くらいにしかならない。
○ここへきて、10月から歯科用貴金属の価格が上がる
9品目について改定。半年前に2981円だった歯科用純金地金は3549円。

など歯科医院全体の厳しさから、原材料費の影響をもろに受けてしまう歯科技工士の厳しい状況を説明していました。
また入れ歯を海外に注文して、国内で作るより安く仕入れているという実態があるといいます。これらの問題を踏まえて、裁判も開かれ、判決が出たばかりです。
中国製の安価な入れ歯や差し歯の輸入で、仕事が脅かされているとして、全国の歯科技工士80人が国を相手取り、海外への義歯製作の委託禁止と損害賠償を求めた訴訟です。東京地裁で開かれました。判決によると…歯科医療の現場では近年、主に中国で製作された義歯が使われるケースが増えているといい、訴訟では「海外製の義歯は無資格者が作った可能性が高く、安全性も疑問」と主張した。
しかし、判決は、義歯の輸入実態や安全性には踏み込まず、製作の規制のあり方についても、「国の裁量に委ねられる」と判断だそうです。
非常に輸入問題や低賃金・重労働という厳しい状況が歯科技工士の課題として挙げられています。

今後、歯科技工士の人手不足が、急速に進んでいくことが予測されています。しかしながら世界から見て、日本人の器用さからくる技術力は必要とされていることも確かです。技工物の輸入問題に関しては、日本の世界にも誇る技術力を停滞させることにもなりかねません。
今後、特に高齢化が進み、入れ歯の需要はますます増えてきています。快適なシニアライフを多くの方が過ごすためには、日本の歯科技工士の方が安心して仕事ができる環境を整えなければなりません。

私の知っている歯科医院の先生は、院内ラボを持っていることもあり、家で例えるなら、歯科技工士が基礎、歯科医師が家屋、歯科衛生士がメンテナンスをしっかりすることで、
安心して過ごせる(食べれる)のだと言っていました。
直接の集患マーケティングにはならないかもしれませんが、歯科技工士の仕組みや技術力をしっかりと患者様に伝えること。これも大切な差別化マーケティングのひとつの方法だと思います。

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